道北 春の陣

週末、用事を終わらせてから北へ車を走らせた。

6時間のドライブの後、ビールと缶詰で夕飯を済ませる。

翌朝、めあてのポイント近くに車を止め、、しばらくやぶ漕ぎをして川へ出た。

夏場と違い、まだ森は歩きやすい。

今年は雪が例年になく少なかったし、ここのところ雨がなかったので、渇水を心配していたが、案の定この時期としてはひどく水が少なく、透明度が高かった。こういう時は魚の出が悪いのだ。

春にしては水が少ない

この日は14時間釣りをした。

途中、場所移動に30分ほど費やしたが、それ以外はずっと釣りをしていた。

中流域はサクラマスがうるさく、下流域はいいサイズの大物が何匹も回遊してくるのは見えたが一切口を使わなかった。

サクラマスがうるさい

今回は足跡だけだった。

日の出から日没まで粘ったのに、この日の釣果は40cmに満たない子イトウ一匹だった。

唯一釣れた、チビイトウ。

朝陽から夕陽まで釣りをした。

二日目の最後にドラマが起こる。

早朝は下流域で口を使わないイトウに、あの手この手で口を使わせようとしたが、全く見向きもされなかった。

大きく場所を変え、別河川。時間的にはワンチャンスあるかないかだ。

3時間ほど釣った後、ここで最後だというポイントに着く。以前何匹か釣ったことのあるポイントで、いい深みがある場所だ。ゆっくり釣りあがると、数十メートル上流で小魚を襲う水しぶきを見た。

じっと観察すると、数分に一度魚を襲っているようだ。

イトウだとは思うがサイズまではわからない。いずれにせよ最後で最大のチャンスだったので、細心の注意を払った。

奴に気づかれないように、だいぶ下流から岸に上がり、そこから崖を登って上流に静かに迂回した。

音を極力立てずに崖を降りて、ボイルしていた辺りを遠めに眺めると、強い流れが深みに入り込んでいる。狭くなった流れの両側には倒木が流れをふさぎ絶好のポイントに見える。イトウはその浅瀬と深くなる境目あたりを狩場にしているようだ。

小魚が追われ水しぶきが立つ。少し間を置き、次にアタックがありそうなタイミングで、ルアーをそっとキャストした。

ここでポイント周りの枝葉にルアーをかけるようなことをしては台無しなので、本当に注意をしてルアーを投げ込む。

よし。うまくいった。ルアーは思った通りの場所に静かに着水した。

そして、1巻き。2巻き。

ルアーがグッと止まる。

食った!

竿を立てると、80cmほどのイトウが体をくねらせるのが見える。

やった、最後にやった!

念のため、もう一度追い合わせを入れる。

イトウの口は堅く、フッキングが甘くて悔しい思いをしたことが何度かある。

その追い合わせの瞬間、ビッとルアーがイトウの口から外れ、テンションが軽くなった。

え?えーーーーっ!?

なんだよーー。

なんだよーーー。

うそだろーー。

森の中で、大声で罵声を浴びせた。誰に?わからない。

この地ではさほど珍しいサイズではないが、自分にとっては大物だったし、何より全く釣れない状況の中での逆転の一尾になるはずだったのだ。

しかも細心の注意を払って、的確にキャストが決まり、そしてしてやったりと掛けたのだ。

帰りの6時間のドライブも悔しくて全く眠くならなかった。

くそっ。来月リベンジだ!