
あのダケカンバを鹿追100名木にしようと思っているんですよ。という話から、ガイドは始まった。
家族で山に行った。知り合いがアウトドアガイドをやっているのだが、彼女に頼んで早春の山を案内してもらったのだ。
20年間、何度となく歩いた山道だったが、この日はとてもゆっくりとしたペースで森を歩いた。いつもの何倍も時間をかけて、足元の小さなものに目を止め、樹幹の広がりを眺め、鳥やナキウサギの声に耳を澄ました。
穏やかな天候の中、温かい日差しが森の中に差し込んで美しかった。
2時間余りの森歩きで、たくさんのことを教えてもらった。
- 元気なダケカンバほど、たくさんの脱皮をすること
- 3cmしか樹高のないトドマツがもう3年も生きていること
- トドマツの松ぼっくりが地上ではほとんど見ることができないこと
- ほんの手で囲えそうなスペースの中に、とてもたくさんのコケや地衣類、シダの仲間がいること
- モモンガがトドマツの葉っぱの真ん中の筋だけ食べ残すこと
- 今まで木の模様だと思っていたもののが地衣類だったこと
- 今までコケだと思っていたものの中に地衣類だったものがあったこと
- 地衣類とは菌類が藻類を住まわせたものだということ
- 風穴の仕組み。温風穴というものがあること
- サルオガセというもじゃもじゃ植物が地衣類だということ
- サルオガセというもじゃもじゃ植物は食用という説と毒という説があること
- サルオガセというもじゃもじゃ植物は60代くらいの人は皆ヒゲとして遊んだことがあること
- ダチョウゴケっていう名のコケはダチョウの羽に似ているからだという説明に、この日唯一納得がいかなかったこと

ミツバオウレン 可愛い。

サルオガセ ヒゲ。

たったこれだけの中に、どれほどの命があるのか

話を聞く前と後とでは、木を見るときの視点が変わった

白いつぶつぶも黒いつぶつぶも地衣類の胞子

オンコの雌花

ヒメスギラン これはシダの仲間

アスヒカズラ これもシダ類。手触りがトカゲっぽい

ダチョウゴケ ダチョウの羽に似ているという

マンネンスギ これもシダ植物
彼女のような素敵な人に、妻や娘を会わせることができて良かった。
笑顔を絶やさず、穏やかなペースで、森の色々なことを話す彼女に娘は森や生き物の知識だけではない大切な何かを学んだに違いない。
帰りはレストランで美味しいものを食べ、道の駅でおやつを買ってから、新得の神社で桜を眺めた。
娘のひいたおみくじは大吉だった。
最良の一日だった。