2020年12月5日 悔しい釣行

岸際は氷が張りだしていた。

はじめにこの川にイトウを狙いに行ったのは2007年で、その次の年に小さいイトウを一匹だけ釣った。

それから、何度もここで釣りをしているが、釣れたのは全部で3匹。一番大きいので50cmだ。

歩いて釣りをしても、カヤックを使っても、イトウの確立の上がるエリアまで行くのには相当に時間と体力を使わねばならない。

そして、その結果は大概無釣果だ。

そんなに釣れない川に通い続ける理由はいくつかあるが、そのうちの一つは友だちが何本もこの川で素晴らしいイトウを釣っているからだ。私自身も彼の釣ったイトウはこの目で見ている。私に釣れたことはないが、いい魚は確実にいる。

12月の1週目、カヤックを使ってこの川で釣りをすることになった。

この日は釣れる気がしていた。

通い始めは自分に釣れる自信はあまりなかった川だったのだが、通ううちにイトウがヒットする瞬間が近づいている確信めいた予感があった。

事実、アタリを感じたり、追いを目にしたり、ここの所の釣行ではイトウの存在を感じることが多くなってきていた。

それなのに

現地に着き、カヤックに空気を入れると、カヤックに上手く空気が入らない。耳を澄ますとシューっという不快な音が聞こえた。

一瞬、頭が真っ白になった。チューブについた折り目の部分が裂けるようにしてかなり大きな穴が開いていた。前の週、家の前で膨らませた時には、全く穴が開いていなかったのに…

諦めきれず、コンビニに走り自転車のパンク修理キットでも売っていないか探したが、そんなものはコンビニにはなかった。そして、とても残念だったが、歩いて釣りをすることにした。

イトウが着くだろうポイントまでは2時間歩かなければならない。足元はぬかるんでいたり、凍っていたりで歩きづらく、危険でもある。

やっとのことでたどり着いたポイントだったが、魚の気配は殆どなかった。小さいアメマスが数匹ヒットしただけで、イトウは釣れなかった。

湿原の中2時間以上かけてポイントまでたどり着いた。 疲れたので、15分くらい昼寝をした。

根掛かり回収機のルーバーが途中で故障した。それもあって、ルアーを幾つもなくした。今年買ったばかりのウエーダーに穴を開けた。枯れた葦の先で目の横とあごの下を切った。

そして、私の行けない別のポイントに入った友人が、素晴らしい釣果に恵まれた。私の何倍もこの川に通う彼が、これまで遭遇したことのないような1日だったと話してくれた。

友人が夢のような釣りをしたそのポイントは、まさに私がその日カヤックで向かおうとしていたポイントだった。

悔しい思いでいっぱいだった。

この川にカヤックを持ち込んで、これまで色々なトラブルはあったが、下らなかったことはこれが初めてだった。

これまでだって現地で穴が開いていたり、バルブのOリングが無くなって空気が漏れたりしたことがあったが、それでも空気を足しながら無理やり下ったのだ。

無理にでも下ればよかった。なぜ、今日に限って下るのを諦めてしまったのか。

来週、もう一度来るには、たくさんのハードルがある。

直さなければならないものがたくさんある。整備しなくてはならないものもある。平日の多忙な業務の中、それらすべてを行う時間を作り出すことは不可能のように思えた。

さらに、今朝の気温は-10度を大きく下回っていた。友人によれば、この日は昼前までポイントは氷におおわれていて釣りにならなかったそうだ。このままの気温が毎日続けば、ポイントは完全に結氷してしまうだろう。

諦めなくてはならないのか。諦めるのか。

最大のそして、千載一遇のチャンスを逃してしまった悲しさは相当に大きかった。